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「実力が2なら、3ないし4の仕事に取り組む」

クリエイターは得てして「いつの日か、この仕事をしてみたい」という願望を少なからず抱いている。ただし「その日」はいつ訪れるのか?いつ「機は熟した」とみなし、どう行動に移せばよいのか?それが分からず躊躇している人もいることだろう。が、中には早々に機は熟したとみて、いや「熟す」云々をさておいて、果敢に挑戦し事を成し遂げるクリエイターもいる。古田氏の場合も、多くの人が「いつの日か」と先々にマイルストーンを置くような「書籍の出版」が最初の仕事だった。

―登山家の野口健さんやボクシングの畑山隆則さんなど、目標に向かって挑戦している若者の姿を綴った「若き挑戦者たち」という本を出しました。ある程度、年齢も近かったというのもあって皆さんに共感してもらい、インタビューというよりは一緒にキャンプしたりバーベキューしたりして、同世代の目線から綴ったルポタージュになりました。

もちろん、事は簡単には進まず紆余曲折もあった。もともとはラジオ番組の企画として持ち込み、収録まで行ったにも関わらず協賛がつかずに頓挫した。

 ―僕自身キャリアがないわけですから、要は「あなた、何者?」と言われて一蹴されることもありましたし、書籍化しようと出版社を回っていた時には「あと5年位キャリアを積んでからにしたら?」と言われたこともありました。でも、5年は待てないなと思ってあきらめずに回った結果、とある出版社が面白がってくれて本になったんです。年齢やキャリアの話をされれば返す刀がないんですが、そこでしょげずに企画内容の話、これはどれだけ魅力的なものになるかという話を情熱的に伝えていきましたね。

出版を皮切りに人との繋がりが生まれ、それまで作家の椎名誠氏やカメラマンの浅井慎平氏らが関わっていた雑誌「ポカラ」のプロデューサーに。その後ニューヨークに渡り、IT関連のコンサル会社を設立。書籍発行、雑誌プロデュース、会社設立など、それぞれのスケールは大きいが「泣かず飛ばずだった」と古田氏は屈託なく言う。ビジネス的な大ヒットこそなかったが、自らのブラッシュアップには大いにつながり、結果として今の自分があるとのこと。

―たとえば実力が「2」だとしたら「10」を必要とされる仕事はとっちゃいけない。でも常に「3」ないし「4」の仕事を取るようにしてきました。自分が心底やりたい!と思うことなら自然と勉強してスキルが身につきますから、その差は埋められると思うんです。

「物事に複数のタグを貼り、自身をgoogle化させる」

古田氏は作曲家としての顔も持ち合わせている。作曲関連の仕事もこなしてきた。しかし、現在関わっている八ヶ岳地域活性プロジェクトにはプロデューサーとして関わっている。作曲家とプロデューサー、一見すると異なる職種ではあるが、共通する部分も多々あると言う。

―コンサートやステージなど音楽のイベントをやる感覚と、地方を活性化させること自体似ていますし、基本的な部分ではどの仕事も同じ性質を持っていると思います。そもそも作曲も、この楽器が加わるとこういうサウンドになるな、と頭の中で想定してイメージを楽譜に落としていく作業です。このプロジェクトに関しても、この人が加わるとこうなっていくな、と思い描いて進めていく意味では同じことです。

 クリエイターというと「手に職を持っている」と定義づけしている人が多い。しかし作曲家はたとえバイオリンが弾けなくても、バイオリンの音色が加わった楽曲を作ることができる。手に職、つまり実際に楽器が弾ける人もクリエイターなら、演奏者にテーマを与えてまとめあげることもクリエイター。古田氏は自身を後者になぞらえている。ただ「まとめあげる」といっても、ただ単にスペシャリストを手配するだけなら、名刺を整理すれば事足りてしまう。そこに自分なりのプラスアルファを加えることが重要だという。

―検索エンジンがアウトプットする情報はエンジン自体のコンテンツではありませんが、検索した人が欲する情報をリンク先から拾い上げることで成り立っています。僕の考えるプロデュースという作業も、いわば「人間google」とでもいいましょうか、これに近いものがあります。ただ、その際重要となるのは、普段からさまざまなモノに対して複数の見方をして「タグ」を頭の中でつけておくことです。たとえば、このテーブル上にあるお茶について、単に「お茶」だけでなく、色や原産地、飲んだ時の状況や気持ちなども自分の中にインプットしておく。そうすると、お客が「お茶」以外のキーワードで検索してきた際も、この情報をアウトプットできるんです。そうすると一見関係ないもの同士がつながって、そこから面白いアイデアが生まれていくことになります。

「肩書きよりも、自分のテーマを持つことが大切」

さらにもうひとつ大切なこと、「検索」を紋切り型にしないコツは「自分のテーマを持つこと」であると言う。

―顧客が掲示したテーマをもとに一から十まで考えるのではなく、まずは「自分のテーマ」を切り口にしていく方が重要だと思います。簡単に言ってしまえば「好きなこと」です。僕の興味の矛先は、家族や愛、健康、コミュニケーション、世界平和、旅、神話などに向いています。これらが自らの「テーマ」であり、常にここを軸として考えていくこと。たとえば今、日常から離脱した地へ旅してゴルフを楽しむ「楽園ゴルフ」というプロジェクトにもプロデューサーとして関わっていますが、僕自身、ゴルフは趣味程度です。でも「旅」や「楽園」、つまり「限りなく心地よい空間」は自分のテーマのひとつです。自分のテーマとクライアントのテーマがうまくシンクロしてプロジェクトが成立しているんです。

先の八ヶ岳地域活性プロジェクトのテーマは「朝」。これも古田氏にとって「限りなく心地よい空間」であり、そこがプロジェクトの切り口となっている。こうした自身のテーマを持つことによって仕事が好転し、増えていく、肩書きは二の次、三の次というのが古田氏の発想だ。

古田氏自身、そうした肩書きを持たない若い人が増えていると感じると言う。もちろん従来のプロフェッショナルのように手に職を持つことは基本であり、とても大切なことである。 ただ、音楽でいうところのオーガナイザーであったり、Yahoo!などの企業が昨今設け始めている「エバンジェリスト」であったり、臨機応変に「場」と「空気」を作る人もまた、時代に求められているプロフェッショナルといえるのではないだろうか?

PROFILE

今回、インタビューを行った「copon norp」は、古田氏も企画に参加した会員制のカフェレストラン。店内には150インチプロジェクターも用意され、映画の試写会やプレス発表などの、イベントスペースとしても利用されている。

古田秘馬 氏 ホームページ
株式会社umari
http://www.umari.jp/