第一回のゲストは、面白法人カヤック 代表取締役CEOの柳澤 大輔氏です。いまの広告業界に対して想うことや、カヤックならではの「バズらせる秘訣」についてお話を伺いながら、コミュニケーションの新しいカタチを探っていきます。
米田 ここ数年で、広告の概念が変わってきたと思うんですね。カンヌが広告祭という名称をやめたのも、象徴的な出来事でしたが。広告に関して柳澤さんが考えることってありますか?
柳澤 広告業界は、常に新しいことに敏感でなければならないですよね。インフラのように10年・20年かけるというよりは、旬なものに焦点を合わせる。だから、広告業界には、今一番旬ことは何なのかに敏感な人が多いし、そういう人を集めたい。ですが、一方でいま広告業界は過渡期で、広告業界そのものが旬かというと難しいところにいる。たとえば、一番旬なのは、業界の歴史とはむしろ無縁なスタートアップベンチャーだったりする。だからなかなか人材面からも良い人が集めにくくなっているのではないかとも思います。
米田 広告業界における新卒の話になりますけど、優秀な学生さんだと2つの方向があるかなって思ってまして。電博とか大手代理店を狙う人と、ベンチャー行くか、いっそ起業しちゃえという人で、二極化しているような気がします。
柳澤 そうですね。たとえばアメリカですと、ベンチャーを立ち上げることと、クリエイティブであることは、同居していることなんですね。
米田 なるほど。
柳澤 広告オタクみたいな人で、広告やりたいから広告業界だけにしか目が向かない人はちょっと今の時代だと逆に古い感じがしてしまう。
米田 広告業界自体が、まだまだマス広告が中心で派手な印象が強いのと、年収が高いこと目を引く理由だと思いますね。
柳澤 ベンチャーとクリエイティビティの同居を強く感じるのは、やっぱりグーグルですね。この間「アルファベット」という社名に変えるという話がありましたけど。それを知った瞬間、衝撃が走りました。
米田 確かにあれは衝撃的でしたね。
柳澤 あれだけ地位を確立しながらも社名を変えるということは、蓄積したものを捨てる可能性すらあるということじゃないですか。悪評が立ったから変えるということがあるけど、決してそうじゃない。このアルファベットという名前に、グーグルとして蓄積したものを超える何かであったり、新しい方向性を確信したのでしょうね。それに惚れ込んだというか。こういった直観力とクリエイティビティをもった経営者というのは、ほんとにすごい。
米田 まさに、社名もコピーですよね。アルファベットときたとき、やはりピンとくるものがありましたよね。
柳澤 やばいな!と思いましたね。
米田 僕らは今、何をするにもアルファベットをパソコンやスマホに打ち込んでいるんですよね。プライベートでも仕事でも、日々、アルファベットを使っているわけです。グーグルという会社は、まさに検索もエンジニアリングも結局はアルファベットなんだっていうメッセージを発しているんですよね。
柳澤 アルファベットのような新しい社名を思いついても、これがこの先の世界を変える言葉になるっていう。その直感に何の保証もないですからね。
米田 柳澤さんが注目しているメディアや広告手法というのはありますか。
柳澤 月並みな話になりますけど、フェイスブックはすごいですね。
米田 ものすごい月並みな話になりましたね(笑)。
柳澤 広告映像の効果たるや半端じゃないですよ。グーグルのアドワーズやアドセンスがでたときもすごいなと思いましたけど。
米田 そうですよね。出はじめた当初は、正直ここまでくると想像しませんでした。
柳澤 僕らは広告の出稿主と制作側、両方を体験していますが、ああ、これでビジネスのスピードが相当あがるなと。アドネットワークなんかもまさに。
米田 ユーザー人口の多さもさることながら、メディアに対する密着時間もさることながら、「密着度」「粘着度」がすごいですよね。
柳澤 KPIで数字的効果を見ても断トツにありますからね。バズらせるという観点からもまだ新しいことが出来ると思いますし。
米田 フェイスブックが日本で定着して3~4年ですけど、ここ数年先、フェイスブックを超えるものって出てくるのかなってよく思います。「次なにが来ますか?」と僕もよく聞かれますが、実際、想像できません。
柳澤 おそらく来るんでしょうね。今までのSNSの世界を見てきても、絶対にひっくり返されるイメージのなかったものが、そうなっちゃいましたからね。
米田 何が来るか想像できます?
柳澤 今はできませんね。今までも常にそうでしたから。
米田 ひっくり返ってしまったとき、企業も人も即座にピボット(方向転換)しなければいけないですよね。状況に対応できる人・企業だけが生き残るという適者生存的な厳しさは、IT業界は特にありますよね。
柳澤 生き残ってきたIT企業は、その辺、みんな得意としていますよね。技術の観点からも、状況に応じた柔軟さは不可欠で。たとえばフラッシュ全盛時代はうちもたくさんのフラッシュエンジニアがいましたが、今は、ほぼ全員ゲームのUnityに移行したか、HTML5に移行しましたね。フロントエンドのエンジニアという意味では変わりありません。ここ数年でも、常に技術においてピボットしています。その潮流に追いついていかないと結構大変な業界だったりしますね。