時代を面白くする広告 - コミュニケーションの新しいカタチを探る。
        第1回 ゲスト
        
        柳澤大輔
        面白法人カヤック 代表取締役

#02 カヤック流「広告表現」について。

色々な方法があると思うんですよ。
それは必ずしもビジュアルだけじゃなく、
テクノロジーであったり。(柳澤)

好きな広告表現、実は特にありません。

米田  インターネットにおける広告のあり方って今はいろいろとあると思いますが、グラフィックや映像も含めて、柳澤さんはどのような広告表現が好きですか?

柳澤  世の中のすべての広告を見ているわけでもないので。好きな広告があるかっていうと難しいかもしれません。

米田  Webサイトをつくるときに、参考にするものはありますか?

柳澤  僕が指揮をとっているプロダクトの一つとしてカヤックのコーポレートサイトがありますが、数年に1回リニューアルします。その時はあらゆるコーポレートサイト、特に同業他社であったり、クリエイティブ業界のサイトをおよそ1,000サイト以上は見ます。

米田  1,000サイトですか!

柳澤  だいたい2週間くらいかかりますが、そこでひとつのトレンドや方向性がカラダで分かってきますね。それらの中でも先進性に富んだもの、ぱっと見た時に既視感のない、他に似たサイトがないというものを作ろうと。そのためにどこを突くか、掘り下げるかということを考えて制作します。

米田  今、猛烈な情報化社会の中で何かをつくってもすぐ追っかけられるし、わざとじゃなくても誰かと似てしまうという現象が起こっている。過去に似たようなものがなくても、自分がリアルタイムで考えていることってだいたい何人か同時に考え付くものです。つくる前のアイデアって絶対にスタンドアローンしないという難しさもあります。

柳澤  でも、色々な方法があると思うんですよ。それは必ずしもビジュアルだけじゃなく、テクノロジーであったり。

米田  やはり、テクノロジーがわかっているというのはすごく重要な点ですよね。

柳澤  はい。特にWebの世界では重要ですよね。

必要なのは、
クリエイティビティだけではない。

米田  クリエイティビティとテクノロジーですと、どちらを重要視しますか?

柳澤  二項対立なものでもない気がしますが、二つに分類するなら、テクノロジーですね。

米田  即答ですね(笑)。

柳澤  やっぱり、デジタル系の企業なので

米田  テクニシャンが必要だってことですね。

柳澤  技術力が高い人材というのは、企業戦略上重要な要素だと思っています。新しい技術が新しいユーザー体験を与えることが多く、その結果バズを起こすということになるので。

米田  次、どんなテクノロジーが来そうですか?

柳澤  新しいことには着手しているのですが、気をつけなくちゃいけないのは、そこに潜在的なユーザーがいるかどうか。うちの会社は新しいモノ好きが多いので、ユーザーがいないところでもつい先行してやってしまうことがあるんですけどね(笑)

米田  わかります(笑)。

柳澤  VRもまだまだユーザーが少なくて。カヤックが作った「VR部」のサイトは、サイトそのものがVRコンテンツになっているんですよ。オキュラスをつけて見ると、そのサイトの中に入れるようになっています。概念としては新しいから、少しは見てくれる人がいるだろうと思っていたのですが、そもそもオキュラスが一般に普及していないので、なかなか見られる人も限られるという(笑)。

米田  多分、テクノロジーとそれを使った広告表現って、ステップを踏む必要がありますよね。人にルールを知ってもらい、ツールを準備して、使ってもらいながら、理解してもらうというような。たとえばPDAからいきなりiPhoneになったら人々は使いこなせなかっただろうし。その間にガラケーやiPodがあったからスムーズに移行できたのかなと。今ですと、ロボットですかね。いきなり万能のロボットが出てもおそらく誰も使いこなせない。

柳澤  確かにそうですね。

いいモノが生まれる組織とは?

柳澤  我々コンテンツを作る側としてのプロセスは2つあると思うんです。新しいものに乗るのであれば、とにかくピボットしやすい組織体力をつけなければいけない。もうひとつは、あまり早く参入しすぎない。タイミングを見極める組織であるということでしょうか。

米田  先を読むにしても、先に行き過ぎないということはプロに必須な心構えですね。

柳澤  先を読むのは難しいので、うちはどちらかというとピボットしていきます。とにかく早く作って早く地盤を作る。

米田  そうなると、求める人材像というのは、変化にすばやく対応できる人ですか?

柳澤  そうですね。例えば、エンジニアでいいますと、過去に「うちではGo言語をいちはやく導入します」というGo言語宣言というのをサイトで発信しました。

米田  プロ意識があって、常に新しいことを吸収できる、実践的な環境ですよね。

柳澤  新しいモノの習得が早くできる組織というか、その勉強の仕方が身につくような組織でありたいと思っています。

米田  なるほど。そういった勉強会というのは?

柳澤  あります。自分でどんどん新しいものを取り入れていく人たちの集団であると良いですよね。リーダーであろうとなかろうと、一早く「これが来そうだな」って、誰かがいって、それぞれの社員が見て、腑に落ちればそこに乗っかるみたいな。

米田  それって、非常に21世紀型の組織ですね。

柳澤  僕が必死に情報を集めないというのがありがたいですね。

米田  強力なリーダーシップというより、内的モチベーションをいかに拾えるかが大事になってきますね。

柳澤  やっぱり現場が一番新しいモノを掴むのが早いので。そこにみんなが乗っかる。つくることを生業としている以上、こういったプロセスは今後も大切にしていきたいですね。