時代を面白くする広告 - コミュニケーションの新しいカタチを探る。
        第1回 ゲスト
        
        柳澤大輔
        面白法人カヤック 代表取締役

#02 カヤック流「バズらせる」とは。

当てている人は、次もまた当てている
というような「当てる感覚」というのは
あるんでしょうけど。(柳澤)

バズらせる人の共通点。

米田  編集や広告の仕事に携わっていますと、よく「バズらせてください」という依頼があると思いますが、バズについて柳澤さんが考えるポイントというのはありますか?

柳澤  色々ありますが、観てて面白いのは、バズで当てている人は、次もまた当てているというような「当てる感覚」というのはあるんでしょうけど。

米田  そういう人に共通しているものって何ですかね?数値化できないというか、ITといえども、結局、僕は属人的要素が強いとは思うのです。

柳澤  感覚的な話になってしまいますが、文脈というか、コンテキストを把握するということでしょうか。表面的ではなく、その裏にある所まで掴んでいるというか。

米田  広告を全く知らない学生さんや業界が異なる方ですと、広告を作るってすごく派手なイメージがあると思いますが、実は裏の部分を固めることが大切なんですよね。

柳澤  という感じがしますね。

米田  メディアでも広告でも、伝えたいことがあるか、表現したいことがあるか、「芯」を持たせないと、今までと同じようなサービスに見えてしまう。これだけ情報化社会が発達していますと、すぐに埋もれてしまいますよね。

柳澤  あとは行き過ぎないことも大事ですよね。やっぱり経験上、過去のパターンから大きく外れたものや、理解されづらいものを出してしまうと当たらない。決して自分よがりにならず、当てられるパターンを再現できるというのが、いわゆるバズを生むことになるんだと思います。

米田  そのパターンをつかむというのが、仕事で重要になるのでしょうね。特にカヤックさんでもそうだと。

柳澤  そうですね。

実際は、アプリひとつ
ダウンロードさせるのも難しい。

米田  最近、話題づくりを求められた仕事はありますか?

柳澤  直近ではサンリオピューロランドの夏季プロモーションの一環で博報堂さんと一緒にお手伝いした「ちゃんりおメーカー」というキャンペーンサイトですね。サンリオ風アバターが作れてSNSのアイコンとして使えたりするものです。アバターは昔からありますけど、それを今はソーシャルメディアを通じて簡単にシェアして大きく拡げることができます。また、サンリオピューロランドに行くと、自分のアバターが参加型映像アトラクションに登場したり、現地に行けば新しいアバターアイテムももらえたりするので、それが話題化し、来園促進につながりました。

米田  まさにカヤックさんが得意としているところですね。

柳澤  そこがカヤックに期待されている所でもありますし。予算がなかったとしても話題にできる方法はないか、とことん考えたいなと。

米田  カヤックさんなりの、話題づくりに必要なパターンってありますか?

柳澤  ソーシャルメディア全盛の時代に、みんながつぶやきたくなる、書きたくなるという気分を起こさせるためには、逆にリアルな体験を伴うものというのも増えてきていますね。うちは、デジタルコンテンツの会社ですけど。カヤックが鎌倉にこだわっているのも場の力を信じていますし、飲食事業をしていたのも、そういった感覚からだと思います。

米田  ネットだけにとどまらない。現実にちゃんとフィードするということですね。

柳澤  デジタルだけというのは難しいと思います。アプリをダウンロードさせること一つにしても、本当にしんどいことなので。

バズらせるためには、[ ]が大切です。

柳澤  鎌倉のIT企業によるカマコンバレーの活動の一環として、「今昔写真」というアプリを制作しました。古い写真と新しい写真を同じ構図や人で比較できるようなアプリで、これを使って街の写真をアーカイブしていこうというものです。これも、アプリだけ出しても、実際鎌倉に住む18万人のうち何人の方がダウンロードするかというのが課題でした。

米田  せっかくいいものをつくっても、ダウンロードされなければ意味がない。でも、それだけではなく、実際に使ってもらえなければダメなわけですよね。

柳澤  だから、同時にリアルなイベントをやるんですね。街のおじいちゃん、おばあちゃんに古い写真を持ってきてもらって。そこで写真部に所属する高校生たちが当時のお話を聞いたあと、その場所まで一緒にピクニックへ行くんです。そして、カシャっと撮ってアプリに投稿していく。そうすることで、初めておばあちゃんがアプリをダウンロードしてくれたり、高校生が「こんなイベントありました」とシェアしてくれたりする。また、そもそもアプリというのはあくまでフックであって、ダウンロードされなくても、世代を超えたコミュニケーションがそこで生まれるだけで十分街の活動として楽しいものになる。参加者の満足度はほんとに高いイベントになっています。

米田  そこでようやく拡がりが出てくるんですね。

柳澤  単に「アプリをダウンロードしてよかったね」というだけではない世界に入っていく。デジタル一辺倒ではなく、リアルな体験とセットでクリエイティブを構築していくのが大切だと思います。

米田  リアルによってアプリをダウンロードしたり、アプリをダウンロードすることで行動に移したり。そういう循環が生まれる。

柳澤  そういう設計は重要だと思います。

米田  広告というものが人の心を動かして消費行動を促すものであれば、結局バーチャルの先のリアルを動かすことが大事になってくるんですよね。

#03 カヤック流「広告表現」について。#03 カヤック流「広告表現」について。