時代を面白くする広告 - コミュニケーションの新しいカタチを探る。

ISSUE 01 GUEST
        Daisuke Yanasawa 第4回 ゲスト 田端信太郎 LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当

時代を面白くする広告 - コミュニケーションの新しいカタチを探る。

第4回のゲストは、LINE株式会社の上級執行役員法人ビジネス担当の田端信太郎氏です。現在、国内利用者数が6,800万人を越えた「LINE」。現在、さまざまなビジネスシーンでもその可能性をいかんなく発揮しているLINEの「これから」も含め、今後のコミュニケーションのあるべき姿を、田端節で語っていただきます。

PROFILE
  • Shintaro Tabata
  • Tomohiko Yoneda - INTERVIEWER

#01 LINEビジネス最前線。

いい意味で、普通の広告主さんに、普通に利用してもらえるようになりました。

ビジネスでも、「使うのが当たり前」。

米田  田端さんは法人ビジネス担当をされているということでお聞きしますが、現在、ビジネスにおいてLINEはどのような状況ですか。

田端  2015年で言いますと、LINEにおいて1200億円の売上が出ましたが、そのうち30%が広告からの売上で、法人のお客様からいただいたものです。実は、現在、この比率が上がっていて、2015年第4四半期ですと、ゲームの課金が37%、広告が33%で、LINEのビジネスモデルとしては、メインとなりつつあります。

米田  田端さんの日々の業務はどのような感じですか。

田端  平たく言えばLINEの広告営業ですが、もう、いろいろです。

米田  田端さんって、ある意味、ピンのネット芸人かのように活躍されていますよね(笑)。

田端  たしかに、芸人っぽい動きをしているかも(笑)。業界のイベントや、広告主、広告代理店の社内セミナーなどで講師をさせていただくのですが、最終的にはゆるく広告営業につなげたりして。その時、社内でも上層部の方が結構いらっしゃることもあって。テレビ中心の広告だけでは仕方ないな、考え直さなきゃといった空気が生まれることも多々ありますね。

米田  LINEがローンチして、もうすぐ5年になります。2016年はLINEにとってメモリアルな年だと思いますが、その5年の中で広告の変化みたいなものってありましたか。

田端  いわゆるイノベーターの普及理論的な話になりますが、新しいメディアができた時って、まずは非常に感度の高い人達が飛びつきますよね。次に、感度がそこそこに高い人達がきて、その後に、普通に保守本流の方々が来る。

米田  いわゆる、マスですよね。LINEでもまさにその現象が起きていると。

田端  はい。最初の1年くらいは単にサービスとして伸びるだけでしたが、今では使い手のグラデーションが変わってきたという感じです。いい意味で、普通の広告主さんに、普通に利用してもらえるようになりました。あるタイミングから、業種によっては「使うのが当たり前」みたいなムードさえ生まれてきて。普及のステージもだいぶ上がってきたかなと。

米田  LINEの広告って、交通広告みたいになってきましたよね。もはやスマートフォンというインフラの中のインフラというか。

田端  そうかもしれませんね。

プロモーションだけでは、もう古い。

米田  今って、もはや誰もがLINEを使っているのが前提じゃないですか。スマートフォンの普及とともに、LINEの普及があって。その中で広告が流れていくというのは、5年前では想像もつきませんでしたよね。

田端  確かにそうかも。

米田  LINEという大きな母体に色々なサービスを立ち上げていると思いますが、現在、どのような方向でサービスを考えていらっしゃいますか。

田端  たとえば、コンビニのローソンさんを例に挙げますと、「からあげクン」の新しい味がでたとき、専用アカウントからクーポンがきて、それをもらった人がお店に行きます。今までは、このようなワンウェイがほとんどでした。これはこれで、しっかりと効果が出たのでいいのですが。このプロセスを第一段階というなら、最近では第二段階に入りつつあるかなと。

米田  第二段階というのは?

田端  たとえば、ドミノピザさんではLINEの中で直接ピザが頼めるんです。LINEの中で、メッセージの形で。そうなると、「AIDMA」でいうアテンションとって欲求をつくるまでで終わらせるのではなく、サービス自体がLINEの中で完結して、購買までつなげてしまう。メディアの接点と購買の接点が一致するわけです。

米田  使う方と使われる方が、どんどん深く連携していく方向になっていますね。

田端  クロネコヤマトさんでも同じことがいえます。“宅急便送りましょう”というプロモーションだけをするのではなく、宅急便というサービスの中のプロセスのひとつとしてLINEが組み込まれていて、配達時間の通知を受けたり、その配達時間を変更するなどをLINEの中でできたりします。

米田  それはとても便利ですね。

田端  みずほ銀行さんでしたら、口座を開きましょうとかではなく、残高照会や入出金の確認がLINEの中でできるとか。そういうふうに、LINEが単にメディアというよりは、サービス自体のプラットフォームになる方向に、より“深化”している。このような事例が、この1年でどんどん増えてきています。

どの国も、欲望の根っこは変わらない。

米田  可能性がどんどん広がっているLINEですが、国外ではどうでしょう。各国のLINEの使われ方等で、日本との違いってありますか。

田端  今、LINEのシェアが高くなっている国・・・タイや台湾、インドネシアになりますが、実は違いってあまりないんですよね。結局、人間の普遍的な欲望といいますか、その根っこの部分って、そんなに変わらなくて。その現れ方が少しだけ違ってくる、くらいのものかな。

米田  諸国で使われ方などでそんなに差はないという感じですか。スタンプもそうだし、チャットツール自体も。

田端  小さな差でいうと、わかりやすい例がスタンプで、ローカライズしたものを出しています。台湾や香港といった中華圏でしたら旧正月を祝うスタンプを、インドネシアならラマダンのスタンプとか。国によって使われ方が異常に違っているということはないです。

米田  日本人が想定できるような使い方をして、みんな楽しんでいるということですね。LINEは日本発のサービスでもかなり突出したものですが、今後、このサービスを超えるものって出てくるのでしょうか。僕としては、ちょっと想像できないのですが。

田端  僕も正直、はっきりしたことは言えないけど・・・。たとえば、PC中心のインターネットの時代は、シリコンバレーが世界の中心だったじゃないですか。ところが、スマートフォンの時代になって、あるいはソーシャルとかメッセージングの時代になると、地方というより、都会に寄ってきている気がします。テンセントの本拠地は、中国の深圳のような大都会ですし。

米田  LINEが東京発みたいなところで言うと、Facebookはサンフランシスコであるみたいな。

田端  人口密度がある程度高い所じゃないと、ソーシャル系の新しいサービスって臨界点に達しないのかなって。そんなふうに考えるとアジアは有利だなっていう気はします。

米田  人口密度でいうと高いですもんね。

田端  GoogleとAppleのプラットフォームのおかげもあって、我々のようなアプリ企業が国境を越えるのって、コンビニが県境を越えるよりはるかに簡単という感覚があります。ほとんど物理的な制約もないし。海外については、いろいろな意味で期待が持てますね。

#02 広告バーリトゥード時代。#02 広告バーリトゥード時代。