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グラフィック、Web、装丁デザインからイラストまで手がける佐藤豊彦氏だが、デザイナーを目指していたわけではないという。

――もともとは音楽で身を立てたいと思っていたんです。理工系の大学に行っていたんですが、バンド(リードギター)活動をしていました。後にメジャーになったバンドです。その頃はバンドマンになるつもりだったので、就職してサラリーマンになることも頭になかったですね。

と語る佐藤氏の机の脇には、今でもギターが置かれている。そんな佐藤氏がデザインの世界に入るきっかけとは?

――バンドのメンバーと打ち合わせ中、たまたまノートにいたずら描きをしていたんです。当時、私のアイドルだったジミ・ヘン(ジミ・ヘンドリクス/ロックミュージシャン)の絵を。それを見たキーボード担当の女の子が、その子は当時からプロのイラストレーターとして仕事をしていたんですが、「それ、おもしろいじゃない。イラストの仕事やってみない?」と、仕事を紹介してくれたのがきっかけでした。 そのうち、そっちのほうが忙しくなっていき、「CHOICE」というコンペで特別賞を頂いたのをきっかけに、マガジンハウスから、田中康夫さん(小説「なんとなく、クリスタル」で1980年、文藝賞受賞。現在、新党日本代表)が連載するすべての雑誌のイラストレーターとして起用されました。

しかし仕事が増えるにつれ、デザインの考え方や基本を学びたいと思った佐藤氏は、河原 淳 (イラストルポの創始者として60~70年代に一世風靡したイラストレーター、デザイナー)氏のスクールで勉強。そして現在は、恩師の志を受け継いで自身がイラストレーターを育てる活動もしている。

――デザイナーやイラストレーターなど、クリエイターは職人的な技術を追い求めるだけではだめなんですよ。クリエイターの評価とは、「いかに経済効果を引き出せるか」だと思います。「経済効果を引き出す」、それは「市場や人をどう捉えるか」ということで、クリエイターとはそういう職業なんだと・・・。そんな想いをこめて、若いイラストレーターを育てています。

つまり、職人的な技だけでは効果的なデザインは出来ない、ということですね?

――ええ、そう思います。「クリエイターのこだわり」も、結果として「経済効果」につながらないといけないと思います。単にデザインという立ち位置ではなく、マーケティング的な部分も分かっていないと効果的なデザインは出来ないんですよ。マーケティングとは、クリエイターの発想を展開させるバックボーンとなるものですよね。

そのような考えで1989年、「SUPER PROJECT」を立ち上げた佐藤氏は、早くからデジタルデザインやインターネットに注目した一人でもある。

 ――イラスト以外にも書籍の装丁デザインや人気デパートのオブジェ製作など、仕事が広がるにつれてスタッフも増えてきましたし、デザイナーというマインドでいろんなことが出来るんじゃないかと思い、会社を立ち上げました。 ちょうど、MacがDTPを始めた頃ですかね、「これは、おもしろい!」と、かなり早い時期からデジタルデザインを始め、DTP入稿もしていました。20インチのモニターが200万円もした時代です。 そんな関係からインターネットの情報も早く入ってきたため、ごく早期に企業のホームページの制作もするようになりました。でも、グラフィックデザイナーの目から見ると、当時のWebデザインはつまらないものが多かったですね。FLASHが登場してからですね、Webデザインがおもしろくなってきたのは。Web2.0の時代になって、Webの世界はますますおもしろくなっていますよ。

社名の「SUPER PROJECT」には、グラフィックやWebだけでなく装丁もオブジェもイラストも、「あらゆるデザインを超越したプロジェクト」という意味が込められている、と語る佐藤豊彦氏。後進のデザイナーを育てていく活動とともに、効果のあるデザインを目指して、ますます仕事の幅を広げていきそうである。

――例えば、ギターが弾けるようになると、他の楽器も弾けるようになるように、何かひとつをやり続けていくと仕事の幅も広がってくるんですよね。でも、ただ技術を追い求めるだけではだめで、「効果的なデザインとは何か?」という視点を常に持っていることが重要です。クリエイターの評価は、「いかに経済効果を引き出せたか」ということ。それを忘れずに、若いクリエイターの皆さんもがんばってください。

PROFILE

■佐藤 豊彦(さとう・とよひこ)
クリエイティブディレクター、イラストレーター

クリエイティブディレクターでありながら、自ら、イラスト、写真、Webデザインも手がけるマルチクリエイター。
代表作は、『MAZDA』や海外ブランドのWebサイト、『マスターカード・キャンペーン』のイラストレーションなど多数。
現在、4つの会社からなる「SUPER PROJECT(スーパー・プロジェクト)」のCEOを務める傍ら、イラストレータやデザイナーの育成などの活動も積極的に行っている。

SUPER PROJECT
http://www.superproject.jp/