時代を面白くする広告 - コミュニケーションの新しいカタチを探る。
        第4回 ゲスト
        
        田端信太郎
        LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当

#02 LINEのこれから。広告のこれから。

決済的なものと広告効果測定の部分が重なり合うといいんじゃないかって思います。

もっと人に寄り添っていきたい。

米田  デジタルが介在することで、旧態依然とした業界で、新たなビジネスが成功するって、いろいろな分野で起こっていますよね。ある企業がものすごい情報を持っていて、ユーザーはその情報をひとつも知らない。要はその情報格差にデジタルが割って入ってきてビジネスが成立するという。

田端  最近いいなと思うのが、マネーツリーとか、マネーフォワードみたいなサービスで。スマートフォンがあることを前提として、自社のサービスとか、製品自体をよりバージョンアップさせるような組み合わせがいいなって。銀行やファンド会社が、自ら純正のものを出してもいいんじゃないかって思います。

米田  スティッキーに人の生活に密着して、寄り添うというか。そういうあり方がもっと増えていきそうですが、LINEは今後、どのように進化していきそうですか。

田端  LINEもそこまでいけたらいいなと。今、LINE Payも含めて、いろいろな会社がモバイル決済を実施していますけど、この決済的なものと広告効果測定の部分が重なり合うといいんじゃないかって思います。LINEのメッセージを通じて結果的に買われているのかとか、そういう所までひもづけば、効果測定でブラックボックスであった部分が明らかになるような気がするんです。

米田  特に消費財のプロモーションとかに有効そうですね。

田端  ファミレスのウェイトレスさんが発注端末を使ってやっていることや、旅行代理店のカウンターの向こうでやっているホテルの空室状況の確認とかも、スマートフォンと直結させちゃえばいい。

米田  飛行機の搭乗手続きとかもできそうですよね。

スマホ2.0の時代へ。

田端  フードコートでしたら、今ですとたくさんのお店があって。混んでいるお店だったら並びますよね。そこでレジに行って、カウンターに行って好きなメニューを選んで。その後、どこに座ろうかなって、席を探すわけじゃないですか。それが、スマートフォンとサービスが直結すれば、いきなり、空いている席があればそこに座って、手元のスマートフォンで頼んでいいわけです。しかも、決済もモバイルペイで終わっていれば、後は頼んだものを持ってくるだけで終わりみたいな。

米田  映画館のチケットとかは、すでにそうなっていますよね。

田端  そんな感じで、モバイルについては、プロモーションの情報伝達の手段としてだけ使うというよりは、サービスと直結するものとして使われるべきだと思います。でも、現在、AppleやGoogleで設定されている決済代行の手数料では、なかなか難しいかもしれません。

米田  外食産業とかは、特に難しいかも。

田端  これが、クレジットカード並みの手数料になれば、一気にそういうのが普及するのではないかと思っています。そうなれば、便利ですよね。世の中に対してのインパクトを考えると、まさにスマートフォン2.0が始まるというか。バージョン2が始まる気がします。

米田  あらゆるジャンルで、決済までやってしまう。しかも、国内だけでなく、国をまたいだりして。

田端  マクドナルドのドライブスルーだって、例えば、5キロ先にお店があると思ったら、あらかじめメニューを頼んで決済も済ませて。後は、できあがったタイミングでテイクアウトすればいいだけですよ。

米田  すべてが予約と決済ができて、いちいちお店に並ぶこともなくなるかもしれませんね。

田端  買い方とか、全部変わりますよね。ドミノピザさんやクロネコヤマトさんのLINEを使ったサービスは、まさにその1歩目となっています。大切なのは、ビジネスプロセスの設計まで作り上げることで、それができて、はじめて、結果的に広告的に機能した、売り上げが増えた、ブランドイメージが上がったというところまで辿り着けると思うんです。最近では、コンサルティング会社とかが、どんどん広告業界に進出していますよね。

米田  結局、富士山をどちら側から登るのか、という話に似ていて。既存の広告業界のほうが、攻められている状態かもしれませんね。クライアントから見れば、結果さえ出してくれれば、どちらでも構わない。

田端  売れればいい。まさにその通りです。

コレができなきゃ、生き抜けない。

米田  広告営業の田端さんも含まれると思われますが、広告のプロの方々は、これからどのような意識を心がけていけばいいと思いますか。

田端  そうですね。まずは、広告マンである前に、ビジネスマンとしての基礎体力を持つというか。

米田  ビジネスマンですか。

田端  全体設計を描けるチカラです。だから競合相手はコンサルタントかもしれませんし、ひょっとしたら、証券会社になるかもしれない。

米田  確かに、そういう時代になりそうですね。広告が広告業界の中だけでは収まらなくなった今となっては。

田端  以前、ユニクロがセオリーを買収したじゃないですか。もしかしたら、さらに高級なブランドを買収してもいいわけです。一時期、バーニーズを買収しかけていましたけど。買収によってできたネットワークを通じて、コラボしたユニクロの商品が増えた結果、ユニクロのブランドイメージが上がるかもしれない。柳井さんに“ブランドイメージ上げろ”って言われたらそのレベルの回答があっていいと思うんです。

米田  従来ですと、ブランドイメージを上げようって言ったら、クリエイティブのレベルで、テレビCMの中でどう格好よく表現するかという発想でした。

田端  これからは、もっと他の手段があっていいと思います。

米田  クリエイティブのデザインというよりも、もはや、情報の流通全体をデザインする必要があるということですね。

田端  はい。そうやって我々は突き進んでいかなければいけないと思います。