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広告業界の未来

第6回 interview

広告業界の未来を語る[株式会社スタジオ イー・スペース 代表取締役 クリエイティブディレクター 村上 竜雄氏3/3

コミュニケーションをデザインする。非常に重要なことだと思いますが、それが出来ていない人もいる中で、何かコツのようなものがありましたら教えてください。

人によってアプローチは異なると思いますが、基本的な手法の1つとして、まず「対象となるユーザーを、具体的に想像する」ことではないでしょうか。いわゆる「ペルソナ」ですね。「これこれ、こういう人はこういう暗黙知を持って、検索エンジンからこのサイトに到達する」とか、「この人はどこかでテレビCMを見て来ている」とか、そういったユーザごとに考えられる流れを何十パターンもイメージしてゆくんです。そして、様々なユーザーの経路を整理し、グループ化して、画面遷移や情報設計を行ってゆく。そういう地道な作業の繰り返しが大切だと思っています。

それと、本物のユーザ感覚を持つこと。「AIDMA」から「AISAS」へ、とか、言葉としては皆さん理解されてますが、では、「本当にユーザー感覚になれているのか?」っていうと、実はけっこう左脳ばかりの人が多い。情報シェアだから「ブログに書いてもらえばよい」みたいな。短絡的にそういう発言をしている人がいると、もう、ちょっと・・・。「本当にこの仕事したいんですか?」って思ってしまいます。自分もちゃんとその中に入り込んでいって、ユーザーと同じように体感し、腑に落ちた状態でなければ、目に見えないコミュニケーションを設計することはできない。設計者であり、また、大衆としてのユーザでもある。そういった点も、大切なのではないでしょうか。

確かに自分自身が興味を持っていないと、クリエイターとして生き残っていけない、というか仕事にならないと思います。面白さを体験して、その面白さを理解しようとするスタンスが大事なんですね。

「紙の仕事がなくなってきたので、とりあえずWEB業界に転職したい」という人は、正直難しいと思います。WEB自体、5年後には、今とまったく違う世界になっている可能性がある業界じゃないですか。そこに対してワクワク感を持てない人は続かないと思います。逆に、本当に興味を持って、転職を考えているグラフィックの方には、とても大きなチャンスがあると思っています。WEB業界は歴史も浅く、総体的にデザインの力がまだまだ弱いと感じています。もともとグラフィックから始めている人は基礎造形力がありますし、ピクセルよりも細かい世界でものを捉えることができる。WEBから始めた人が違和感を感じられない細部まで、気持ち悪いって思う感覚を持っている。ですから、WEBに明るいアートディレクター職の方々は、これから引く手数多だと思いますよ。当社にもぜひ来て欲しいです(笑)。

個人的に、僕も紙メディアからのスタートだったので、グラフィックやっている方には、これからどんどん活躍して欲しいと思っています。

デザインの現場が、手書きからMacになって、一昔前からは想像できないくらい便利になりました。それによって起っている弊害みたいなものはありますか?

本当に便利になりましたよね。でも、Macが登場して、トライ&エラーを繰り返しながら作れるようになったのは良いことなんですが、その反面、想像力が退化してきているのではないかと感じることもあります。かつては、作る前に頭に具体的なイメージを浮かべていなければ仕事にならなかった部分も、今では、モニタでプレビューしながら、上から順番に色をはめてみて、「あっ、これいいな!」みたいに選んだり。偶然性も、1つのアプローチとして有効であることは否定しませんが、デザインって設計であるわけですから、「なんとなく合っちゃった」っていうのは、プロの仕事じゃないと思うです。便利がゆえに、そこに甘えた作り方ばかりしていると、その機能の範囲でしか仕事ができなくなってしまう。そういった弊害を感じることがあります。

村上さんが人を採用する上で、重要だと思われるポイントを教えてください。

2つありまして、まず、最も大事にしているのは、「制作が好きだ!」と胸を張って言えることです。当社の募集要項にも、応募資格として明記してあります。「好き」って言えることは、そもそも「熱意」を持てるということ。無理して一時的にやる気を見せても、続かなければ本物にはなれないし、意味がない。「サステナビリティ(持続可能性)」のある熱を持って、仕事に取り組めること。そのために、「好き」っていう気持ちを重要視しています。

そしてもう1つが「思いやり」。やはりチームプレー。「思いやり」とか「心配り」が大切ですね。そもそも「心配り」というのは、「相手が何を欲しているのか察する力」。これがないと、コミュニケーションの仕事をするのは厳しいと思います。情報発信者とユーザーをつなぐことが仕事である以上、相手のことを察する力がないっていうのは致命的ですよね。

写真左から:プロフェッショナルメディア 若村、村上氏

広告業界での転職を考えている人に対して一言アドバイスをお願い致します。

ちゃんと会社を選んで転職して欲しいと思います。

ただ単に入れてくれる会社を選ぶっていうのは、あまり意味ないというか、すごく勿体ないことだと思うんです。なんかこう、入れてもらうことが目的になっている人を見ることが多々あって・・・。だから僕は、「会社があなたを見ているように、あなたも僕らの会社を見てくださいね」っていうスタンスで面接しています。せっかくお互いの時間を使っているんだから、「なんでも聞いてね!」って。実際、質問してもらう時間のほうが長いことも珍しくありません。その上で一緒に働きたいって心から思えることを大事にしています。 転職活動は、勤めているわけでもない他の会社に、正面からぶつかることのできる絶好のチャンスなわけです。是非、色々な会社に行って、話を聞いて、働いている人やビジョンに自分が合っているのかをしっかりと見極めて、素敵な転職して頂きたいと思います。

本日はありがとうございました。

interviewer:プロフェッショナルメディア 若村

PROFILE

村上竜雄(むらかみ・たつお)。1971年生まれ、三重県志摩市出身。

東京理科大学工学部経営工学科卒。大手金融機関でのSE、デザイン会社を経て、1998年、StudioE-SPACEを創業。翌年法人化。同時期、VJユニット「光楽迷彩」を結成、都内CLUBを中心に、野外レイヴ等でのパフォーマンスを行う。

2003年、麻布十番にオープンした「ギャラリーカフェバー縁縁」では、既に100組を超えるアーティストが個展を開催。

創業10周年を迎えた2008年、CSR活動の一環としてWEBサイト「ロハスイッチ」「econoco」を開設。デザイン=コミュニケーションをテーマに、メディアの枠にとらわれない幅広い活動を続けている。

その他、専門学校やスクールでの講師・講演、専門書籍の監修・執筆も多数。

株式会社スタジオイー・スペース

http://www.studioespace.co.jp/

ギャラリーカフェバー縁縁[enyen]

http://enyen.jp/